五十嵐貴久「土井徹先生の診療事件簿」
土井徹先生の診療事件簿 五十嵐 貴久 幻冬舎 2008-11 asin:4344015797 Amazonで詳しく見る |
キャリアゆえ女副署長になってしまった令は、動物と話ができる不思議な獣医に出会う。連作ミステリー。
ドリトル先生みたいな設定に惹かれて読んでみたのだけど、なんというか語り手であるヒロインが全然好きになれなくて、ついていけなかった。
だって就職氷河期だからやりたい職種もハッキリせぬままなんとなく公務員国家試験受けて、受かったら亡父が伝説の警察官だったからって警視庁入りとは。
ここまでは我慢できるが、副署長がお飾りで閑職だからと暇を持て余すヒロインには怒りすら覚えるね。けっ、高給とりのクセに!
探せばいくらでも仕事がありそうなのに、過去の書類にすら目も通さずゲーム三昧。休みの日の仕事連絡(それも殺人事件発生の報だよ?!)を露骨に面倒くさがったり、その上チラ聞きした単語で同僚を疑うなど、私にはヒロインは軽薄でいやなヤツとしか思えない。そんなに警察がいやなら、とっととやめちまいなっ!
これで成長物語だというなら最初の印象が悪くても耐えるが、ほっとんど成長しないもんなー。かろうじて、ラストにちょっぴり仕事にやる気を見せるけど、身近に人死にが出たからなのかよ。それっぽっちでは、ここまで読んで溜まったストレスは解消されないんだよな。
タイトルにもなっている獣医・土井先生の印象も薄い。
動物の蘊蓄は類書であまり目にしないタイプのネタが多かっただけに、ヒロインの苛立たしいまでの怠惰ぶりが残念。