読書日記PNU屋

読書の記録

真藤順丈「庵堂三兄弟の聖職」

庵堂三兄弟の聖職庵堂三兄弟の聖職
真藤 順丈

角川グループパブリッシング 2008-10-24
asin:4048738933

Amazonで詳しく見る

 遺体加工を生業とする長兄のもとに、弟たちが揃うとき、家の秘密が明らかになる。新人賞を次々とった著者の角川ホラー大賞受賞作。
「地図男」地図男 (ダ・ヴィンチブックス)はむせかえるほどに古川日出男文体でウヘァと思ったが、本書は古川風味は抜き。
 遺体加工師というグロな設定の割りには、淡々とした描写がグロテスクさを感じさせない。そこが狙って成功したことなのか、それとも失敗なのかはよくわかんないので判断保留ということで。
 エド・ゲイン(殺人もしたし死体からランプシェードや乳房つきチョッキなんかを勝手に作成してた有名な犯罪者)日本版みたいなキッツい話かと思ったら、家族のイイ話なんで、そこは拍子抜けか。ストーリーの縦軸は弱いものの、ところどころにイイ話を仕込み家族愛でまとめてみせる技や、大きな欠点…減点部分が見当たらないところは優等生的な印象。
 私的には、巧いところは見受けられるが、特に惚れ込むポイントはなしかなあ。ラスト、彼の決死の行動も、自己満足にしか思えないし…まあ、相性がよくなかったってことで。
p.s.しかし、著者略歴の『デビュー前は月一回は新人賞に応募』ってスゲエやね。活字界の江川達也のよーだ(漫画家・江川達也は、持ち込みでボツを食らうとすぐさま次の作品を仕上げて再び持ち込みをしたと聞く)。