伊坂幸太郎「モダンタイムス」
モダンタイムス 伊坂 幸太郎 講談社 2008-10-15 asin:4062150735 Amazonで詳しく見る |
謎の監視システムがあることに気付いた男たちは暴力にさらされる。個人が社会を変えることはできるのか?
「魔王」の続編だが、あちらほどの重苦しさはない。
頭のブッ飛んだ嫉妬深い女性など、現実にはおよそありえないような造形のキャラがぞろぞろ出てくるせいか、シリアスなシーンのはずなのにどこかコミカルにも感じられる……と思ったら、漫画雑誌に連載されていたんだなあ。キャラが多い割には、みな一癖あるものだから、誰も感情移入できる人物がいませーん!な状態になり、私はあまり楽しめなかった。
しかし、主人公の選択はリアルに我々読者が同じ目に遭ったらほとんどの人が選ぶであろうもので、好きにはなれないが、そこにはリアルを感じた。同じく個人VS国を描く「ゴールデンスランバー」の方が私の好みだった。
この作品にノれない理由はキャラの思考にあって、意味ありげなタイトルのビデオが送られて来ていながら(事前に不審な電話すらあったのに!)興味も示さず古い映画を何本も悠長に見たりだとか、知人が死にかけていることより夫の浮気を疑うことが大事なまるで漫画ちっくな思考体系の妻とか、知人の安否を気遣うふりして深夜の赤信号をこれまた悠長に待つ主人公がとっても気に入らないわけなのね、私は。ここらへんに不自然さを覚えるのは、単なる文化の違い?
小説家退場のシーンは感動的だったし、主張にはいいところもあるし退屈はしないのだが、小さな違和感が気になる小説だった。
こっちはイラストつき限定版。二段組。人物のイメージが限定されてしまうのが難やね。