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読書の記録

夢枕獏「東天の獅子 天の巻・嘉納流柔術」1・2

東天の獅子 第1巻 天の巻・嘉納流柔術 (1)東天の獅子 第1巻
夢枕 獏

双葉社 2008-10
asin:4575236373

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東天の獅子 第2巻 天の巻・嘉納流柔術 (2)東天の獅子 第2巻
夢枕 獏

双葉社 2008-10
asin:4575236381

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 柔術から柔道へ、そしてバーリトゥードへ…実在人物が鮮やかに舞う、闘う男列伝。
 私は夢枕獏のあまり熱心な読者ではない(それでも、著者が格闘好きくらいのことは知っている)ので、なんとなく読み始めたらすごかった。のっけから、著者が『長くなってごめん、でもおもしろいから!』(←意訳)のように宣言しているのだから。カーッ、しょっちゃって、どれどれホントに面白いの?と思って読むが、これが本当に面白いんだよ。
 私は柔道の知識なんてまるでなくて、講道館も初耳だしましてその創始者も知らないし、知っているのは谷選手(注:本書にヤワラちゃんは出ません)くらいの全く無知のまま本書を読み始めたのだけれど、それでも面白いんだものなあ。
 まず、本書には実在の人物がぞろぞろ出てくる。その多くも、かつて理系学生で日本史非選択者だった自分には初めて見る名前ばっかりなんだが(勝さんは知っているが)、昔の日本にはこんな豪傑がわんさかいたのねえ、ってなもんで、いつの間にかストーリーのトリコになっていくのである。著者はさすが格闘ファンだけあって、流れるような格闘描写も美しく、迫力がある。
 木多康昭喧嘩商売」のマジメバージョンか山口貴由シグルイ」っぽい絵をアタマに描いて読んだけれど、あながち間違いではないと思う。
 上下巻で割とボリュームがあるが、登場人物がたいへんに魅力的なのですらすら読み終えてしまった。続刊が本当に楽しみである。
p.s.『嘉納治五郎』で検索したら、晩年の映像がyoutubeにあがっていた。見たところ、型が美しくて、まるで舞のようであった。武道ってすごいなあ。軟弱な自分はやるつもりはないんだけれど、憧れる。