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戸梶圭太「今日の特集」

今日の特集今日の特集
戸梶 圭太

中央公論新社 2008-09
asin:4120039773

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 報道番組の取材を代行する下請け会社は激安人間の巣窟だった!トカジ流AD哀史。
 ハイ、いつも通りのトカジ小説ですな。表紙やタイトルから想像されるほど社会派小説じゃあない。嫌なやつの言動を執拗に描写する様はピカイチ。ラストに暴力的にぶっ飛ぶのもいつも通り、絶望と希望入り交じるのもいつも通り。でも、現実からハミ出ないぶん、いつもよりは飛ばない方かしら。
 私は以前一度だけ民放でブログが紹介されたんだが、そのとき下請け会社の人が取材に来た。すごく腰の低い穏やかな人であった。一度会って打ち合わせしたのち、深夜にも電話で問い合わせが来たり、それはそれは綿密な打ち合わせをして、いざ本チャンの放映を見たら打ち合わせたことの大半がカット、私の実年齢に加えブログからの紹介エピソードが新規に付け加わっており、あんな綿密に打ち合わせ話し合ったのに、何がどうなってこうなったんじゃあああ?!と疑問に思ったものである。
 ちなみに、新規に加えられたエピソードは現実にはなかったことで脚色されていて、ブログ作者の私ですら見知らぬ内容になっていた。そんなわけで、取材現場の人は丁寧で真面目だったけれど、テレビ業界はいろいろあるらしい…と勉強になったのを、本書を読んで思い出した。
 本の感想に戻ると将来のヴィジョンなき低所得層の不安と焦燥とか、派遣問題とか、裁判員制度などがさりげなく盛り込まれていて、明るくない日本の未来を想像した書物なのかもしれないと思った。