乾くるみ「カラット探偵事務所の事件簿(1)」
カラット探偵事務所の事件簿 1 乾 くるみ PHP研究所 2008-09-13 asin:4569696775 Amazonで詳しく見る |
浮気調査は苦手だけれど、謎解きは得意な探偵の短編集。
本編が始まって4ページ目、登場人物の性格描写で
「典型的なB型人間」
などと書いてあるから怒りのあまり本を投げそうになった。
松岡圭祐のミステリー「ブラッドタイプ」を見習ってほしい。
まず、こんな出だしで感情移入をはばまれたことをさしおいても、ちっともワクワクできない。日常の謎系ミステリーではしばしばこじつけや大げさが見られるが本書も一応日常の謎系なのだろうから、謎があんまし魅力的でないのはジャンル特性として置いておこう。
私が魅力を感じない理由はキャラクター。まず、オヤジギャグを飛ばす探偵がイケてない。敬語とオヤジギャグという特徴を除いたら何も印象に残らない(推理力はあるという設定だが、キャラとして存在が薄い)。ワトスン役も同様で、言葉遣いがハードボイルド調であるということ以外は存在理由が希薄。
そんなキャラたちが頭でっかちの推理を繰り広げるので、物語の面白さ至上主義で読書している私は気落ちするわけなのだ。ロジックのみを愉しむミステリーマニアには、よいんじゃね。マニア向けなんじゃね、この本。
そして最大の脱力はラスト。ネタバレを防ぐため伏字にしとくけど、2007年に出た同ジャンルのすばらしき推理小説「○の○く○は○を○け○う」とモロかぶりでいただけない。漫画で言えば「○ろ○」、映画だったら「○リ○ン」でも既出のネタだからなー。この設定でこのラスト、私には魅力と思えないのだが。で、(1)ってことはそのラストで続編があるのかい!?私ゃもう読まないな、このシリーズは。