栗田有起「蟋蟀」
蟋蟀 栗田 有起 筑摩書房 2008-09 asin:4480804137 Amazonで詳しく見る |
超能力から同性愛まで、ほんのり不思議な短編集。
「お縫い子テルミー」以来、著者の小説に注目しているのだが、過度に私が期待しすぎたのがよくなかったのか、あまり印象に残らない本だった。色にたとえればパステルカラーか、淡くて優しい物語なので好きな人は好きかも。私が好きなのは原色に近いヴィヴィッドな物語なので。
短編ならではだけれど、これからどうなるのーっ、というところでふつりと物語が途切れるのももどかしい。不条理系に分類される話もあるし。映像的なシーンが多い短編集なんだが、もうひとひねり欲しいと思うのは贅沢だろうか。雰囲気はバリー・ユアグロー「一人の男が飛行機から飛び降りる」に近いような気がする。
よくあるタイプの話でクサイほどに王道な「鮫島夫人」はラストがちょっと好き。
p.s.しかし、ブンガクと不倫って切り離せないもんなの?なんなのこの不倫登場率。あんま不倫モノ好きじゃないんですけど…。