真梨幸子「クロク、ヌレ!」
クロク、ヌレ! 真梨 幸子 講談社 2008-09-05 asin:4062149621 Amazonで詳しく見る |
事故か、殺人か?急死した作家が死後の世界から見つめる人間模様サスペンス。
作家の遺産分配とか死の謎が中心と思わせて、舞台はいきなりパワフルな老女とおとなしい娘に飛び、さらに広告・出版業界や早逝した無名の画家に移ってゆく。それらが全てつながってくる様は面白いのだが、少し乱暴な展開(警察がそれしきの証拠で逮捕しないだろ!とか、真相はかなりあっさりとか)もあって、ミステリーを期待すると面食らうかもしれない。
ただ、本書のテーマは単行本のオビにあるような愛憎ですらなく、実は〔女のしたたかさ〕なのではないかと思うのだ。愛憎もちらっと触れられるけれど、私が本書を読んで一番印象深かったのは女性の強さであった。それに比べて、男性キャラの生命力の弱いことよ……。
狙っての効果なのか天然なのかわからないが、シリアスなはずの場面でもどこかユーモラスな筆致なのが少々気になる。描き様によってはもっと掘り下げられる話だとは思うが、女のしたたかさを味わえるエンタメだと思う。
p.s.本書の好き嫌い論を読んで、高河ゆん「ローラカイザー (1)」を思い出したよ。アレはもっとストレートに好きと嫌いのどちらの感情がより強いかって漫画だからな。
p.s.その2.ゴッホとかブライアン・ジョーンズとか、作中でも出てくるように現実の元ネタはあるんだけど、アレンジが成功していると思う。