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読書の記録

重松清「気をつけ、礼。」

気をつけ、礼。気をつけ、礼。
重松 清

新潮社 2008-08
asin:4104075094

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 生徒と先生にまつわるちょっといい話六篇を収録する短編集。
 いや、よく出来た短編集だとは思うのだが、出来すぎなのがやっぱ気になるな。ミネラルウォーターのごときすっきりしたのどごしの話ばかりだけれど、現実はもっと山芋すりおろしドリンクのように粘っこいからなあ、学校にまつわるあれこれって。まあ、教育現場を遠く離れたかつて生徒だった大人が読んで、イイハナシダナーっとしんみりするにはいいかもしんないね。
 私的には「白髪のニール」はカッコ良すぎるし、「ドロップスは神さまの涙」と「泣くな赤鬼」はすごく感動的なんだけど病気の描き方が好きじゃなくて、「にんじん」と表題作は甘いと思うんだ。
 「マティスのビンタ」は元生徒が恍惚の人となった元教師のいる施設を訪ねる話だが、どうも動機が弱いような。度忘れして書名が思い出せないんだけど昔読んだ角田光代か誰かの短編集に、やはり大人になった元生徒が痴ほうで入所しているかつての先生を訪ねていく話があって、そちらの設定の方が嫌な迫力があって印象的だった。