馳星周「9・11倶楽部」
9・11倶楽部 馳 星周 文藝春秋 2008-07 asin:4163272402 Amazonで詳しく見る |
サリン事件で妻子を亡くした救急救命士の織田は、捨て子たちのコミュニティを知り、善意から悪に手を染めていく。哀しきサスペンス。
サリン禍の過去や子供の病気などつくりすぎな設定と思えるし、主人公が道を踏みはずしていく思考過程がいまいちピンとこない(いきなり闇社会へ身を投じなくとも、仕事の信用で借金できそうな気がする)のだが、疾走感のある小説だった。
この作品が不思議なのは悪を為す側がワルじゃないこと。ただ、だからこそ主人公と彼らが象徴にすぎないモノの破壊にこだわるのかが私には理解できなかった。過去にテロで家族を失った人間がテロリストになるだけの説得力が感じられないし読み取ることができない。そこに何とも言えぬ居心地の悪さを覚えた。