舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日」
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子供探しを得意とする探偵ディスコは、救出した6歳の幼女・梢と同居していたのだが、彼女に異変が…?アイデンティティクライシスなミステリーにしてSFにしてブンガク。
ミステリーへの批判だとか愛情だとかメタがどうとかSF的な概念が云々とかは御偉いレビュアーが書いてくれるだろうから、一個人として思ったことを書いてみる。
正直に言えば、面白かった。だが女性としては(私をもって「女性」を代表するのは無理があるかもしれないが)、ようじょをアレコレするところが心底気持ち悪かった。
こっからやや内容にふれます注意。
ストーリー上必要あってのことではあるのだけれど、書き方が粘っこくてね…こんなイヤなレイプシーンは中島らも「酒気帯び車椅子」以来である。陵辱シーンに読んで精神的に暗く落ち込むほどのインパクトがあるので、そういうのが苦手な人には絶対におすすめしない。
主人公の特殊能力、ミステリー的定型小説への揶揄、SFでうまく避けられてきた概念への挑戦(およびようじょ陵辱)などは本作のオリジナリティが発揮されたところだと思う。
でも。だけどさ。
これ、まるきり灰崎抗「想師」だよね。
世界が観察者により(以下略)って物理学の基本をさらに進めて、人の心のありようが云々ってのがまるっきり「想師」とおんなじ。
単なる設定の類似で片付けるには、ラスト、敵の正体までもが「想師 悪魔の闇鍋」と同じっていうのがモニョる/複雑な気分だ/釈然としない。
まあ、最終的な決着は民話のパクリ…と言って悪ければ、オマージュでもリスペクトでも好きな言葉をなんなりと!!!なんだけどね。
世界の命運をひとりのイマジネーション豊かな男が背負う とか、彼の幸運をまた一人のファム・ファタルがにぎっている なんてところまでまんま想師だわね。私は「想師」の方がシンプルにダイナミックで好きだが。
著者は覆面作家だというから灰崎抗と同一人物ならば何の不思議もないのだけれど、文体から言ってまず違うだろうな。
そうするとディスコ=草薙、水星C=九鬼+シッキー、梢=彩香、黒い鳥の男=ヌーネかしらん。
あと、村上春樹くさくもある。