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読書の記録

宮部みゆき「おそろし」

おそろし 三島屋変調百物語事始おそろし 三島屋変調百物語事始
宮部 みゆき

角川グループパブリッシング 2008-07-30
asin:4048738593

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 副題「三島屋変調百物語事始」。
 お江戸の三島屋に預けられた旅館の娘・おちかが主人の頼みで変わった話を集めることになる、ハートフル時代小説。オカルトやスーパーナチュラルはアリの世界だ。
 設定からし北村薫「語り女たち」語り女たち (新潮文庫 き 17-10)の時代劇バージョンなのかなあと思っていたら、失われた少女を連れ戻しに行くオチがまんま映画「ポルターガイストポルターガイストみたいだなあ。
 しょっぱなの話が好みじゃなくて読むのやめようかと思ったが、「凶宅」は雰囲気出ていたね、まるで「ポルターガイスト」だけど。怪談の怖さレベルは少しひんやりといったところでフリークには物足りない。とはいえ、怪談ジャンキーでなければそれなりに楽しめるだろう。
 感動的なラストなのだが、著者の人の良さみたいなものが前に出過ぎており、釈然としないところも残った(作中人物からもツッコミが入るが)。性善説に偏りすぎじゃないか?
 主人がまだ傷癒えぬおちかに話を聞くよう頼むのも、解せない。ふつうカウンセリングではありえないことだろう。いくら時代劇でも、主人がおちかに人から話を聞くよう促すのが、私には必然性を感じないのだ。物語だからうなくいくけれども、人の話店それも尋常ならざる苦労話を聞き、聞き続けるのはとても精神的エネルギーを要することだから、この状態のおちかにやらせるのはいかがなものかと思うんだよなあ。
 続編があるような、ないような微妙なラストゆえ、続刊にて謎を解決するのだろうか?
 最後に、もう充分に人気作家である著者のことだから必要ないかもしれないが、あからさまなお人好し成分を昇華できたらもう一段階小説のレベルが上がるのでは…と思うと惜しい。