有栖川有栖「妃は船を沈める」
妃は船を沈める 有栖川有栖 光文社 2008-07-18 asin:4334926185 Amazonで詳しく見る |
火村&アリスが謎を解く!三編が収録されているわけだが、「幕間」はミステリーとは言えないので実質二編か。
推理小説として見たとき、さほど新しいトリックがあるでもないが、第一章の古典恐怖小説への新解釈は面白かった。私はジュブナイル版でそれを読んでおきながら、火村言うところの「幸福な読者」に過ぎなかったので、こんなミステリー的発想があるのかと驚かされた。
推理がどうというよりも、アリスと火村の掛け合いが楽しかったりする読者な私だが、いつも誤推理を続けざまに繰り出しては玉砕するアリスにしては珍しく有益な発言をしているところも本書の見所だろう。
ただ、私はラスト悲しき犯人の造形に興味を持てなかったので、楽しみは第一章で出尽くしてしまった。