小林美佳「性犯罪被害にあうということ」
性犯罪被害にあうということ 小林 美佳 朝日新聞出版 2008-04-22 asin:4022504218 Amazonで詳しく見る |
性犯罪被害にあって一変した生活を本人が綴るノンフィクション。
確かに、何と言えば適切なのかわからない。実名および顔写真つきでストレートにインパクトのある本だ。本書により、同種の被害に遭った人に勇気を与えるのかもしれない…というのは、想像でしかないし。
前半の身を切るようにつらい体験を読み、本書は男女の性別にかかわらず広く読まれてほしいと思った。当事者と家族・恋人との考え方の溝がよく伝わってきて、胸が苦しくなった。
だが、私の想像力の限界か、それともただ単に著者と私が考え方の違う人間だからなのか、読み進めるにつれて理解が及ばなくなっていった。たとえば、我慢をして結婚しなくてもと私なんかは思うし、犯罪被害者だから全員がまったく同じ考え方に至るはずもないと思う。著者が名前を挙げている活動家の人を私は知らないしAERAも読まないし特集番組も見ていないので真意はわからないけれど、被害者が故人ならば遺族が代弁するしかないし、裁判に出席するもしないも一律に決めてよいものではなく、被害者個々の自由意志に委ねることができたらいいのではないか。
p.s.書影を利用するためオンライン書店へのリンクを参照したところ、その書店では「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」との関連商品リンク一覧が出るわけ。すると、そこにはトラウマ克服本だけではなく、扇情的なレイプ談が何冊もあがっているのだ。著者は同種の被害にあっている同性や、恋人や肉親が被害にあった男性たちのためにものしたのだと思うが、なんて現実は残酷なんだろう。性的暴力を好む男性の、好奇の目にもさらされているとは。改めて、本書はほんとうにチャレンジャーな本なのだと感じた。