桜庭一樹「荒野」
荒野 桜庭 一樹 文藝春秋 2008-05-28 asin:416327040X Amazonで詳しく見る |
ハングリーアートの子供、荒野の多感な少女時代を書く小説。
ああ、なんて甘酸っぱく、照れ臭く、くすぐったくもやるせない小説なのだろう。一般に評価の高い「私の男」より、本書や「少女七竃と七人の可愛そうな大人」みたいな路線の方が私は好きだ。
今現在若い人がどんな感想を持つかはわからないが、かつて少女だった中年にはずぎゅんと胸に迫るものがあった。誰しもこのように純真で潔癖で、青くて固いのに白くやわらかな時代があったはず。青春時代の空気を蘇らせる、みずみずしい感覚描写にあふれた一冊だ。
p.s.お父さんは武者小路実篤みたいな小説家だなあ。