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読書の記録

新堂冬樹「枕女優」

枕女優枕女優
新堂冬樹

河出書房新社 2008-05-14
asin:4309018645

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 芸能界に憧れた女の子は、事務所に入り顔を整形し、体を餌にのしあがっていくが。
 けして芸能界には詳しくない私だが、その私ですらタイトルから想像できる範囲の出来事しか起こらない小説であった。そりゃ起きてることは確かにひどいけど、その描写はそこらの読み捨て成年マンガと変わりはない。これでは、週刊ナントカの記事のほうがよほど刺激的なのではないか。
 
 整形にしたって、描写をあっさりさらっと流しているから受ける側の不安や困惑や痛みが伝わってこない。著者の文章の読みやすさ、わかりやすさは評価するが、それが悪い方に向っているような気がしてならない。いかにもケータイ小説的ウスさと言うか。要するに、迫力がない。エロ業界人のねちっこい変態描写にかろうじてかつての新堂作品の面影はあるが、私が著者に期待してるのはそういうところじゃないし。もう、「カリスマ」や「炎と氷」みたいな小説は出してくれないのかな。
 設定は違うのだが、芸能界に倦むヒロインは綿矢りさ「夢を与える」夢を与えるを想起させた。


p.s.役に入り込むあまりその人物になりきってしまって、精神的均衡を失い自死を選んだ俳優がかつて実在した。この小説の枕営業以外の部分はその人がモデルになっているのかなあ、と思ったり。演技・演劇をとくに勉強したわけでもないコが、いくらカラダをエサにとはいえすいすい出世していくのには無理があると思うのだがなあ。