オールタイムベスト、SF？ホラー？アクション？

　ツレに本を薦めるにあたって、自分でもう一度読み返してみた。
　やはり面白かった。だがやや人によって受け付ける・受け付けないがあるかもしれないが、想像力に自信のある人なら一度チャレンジして損はないはず。

想師―EXPLORER IN THE VISIONARY WORLD 灰崎 抗 学習研究社 2002-01 asin:4054015743 Amazonで詳しく見る

　若干２５歳の草薙は、とある特殊能力を持っていた。想師と呼ばれる彼らは、旋視・転視と呼ばれる能力を駆使し、デッドマンズ・ネットで死者とも語ることが出来るのだ！師匠や弟子、恋人を愛する草薙の前に、強大な敵が現れ、果てしない闘いが始まる！
　面白い！すさまじく面白い、手に汗握るバトルアクションだ。こんな面白い作家を知らなかったなんて、人生を損していた気分。
　主人公・草薙は特殊な視点から、現実の新たなる位相を見ることが出来るのだが、そのイメージの奔流が素晴らしい。読みやすくリズムのいい文体と、目を見張る描写に虜になってしまう。私の貧困な想像力では数々の鮮やかなイメージが上手く浮かばず、もどかしい思いをした。ヒトの思考を映像化するスコープが発明されたなら、著者の頭にひとつなぎして本作の映像イメージに案内して頂きたくなってしまうくらいだ。
　迷える主人公草薙、孤独と狂気を見せつける悪役達といい、どのキャラクターも魅力的でゾクゾクと血が騒ぐ。
　息をもつかせぬ展開、奔放な奇想に時を忘れる１冊。見事と言う他は無い。
　映画「ＭＡＴＲＩＸ」（１）や細野不二彦の漫画「ＴＨＥ　ＳＬＥＥＰＥＲ」が好きな向きならば、必ずや大満足されることと思う。

想師〈2〉悪魔の闇鍋―EXPLORER IN THE VISIONARY WORLD2 (ウルフ・ノベルス) 灰崎 抗 学習研究社 2003-07 asin:4054021360 Amazonで詳しく見る

　想師・草薙は、地獄寺の化け物退治を引き受ける。そこで開いたパンドラの箱の中身とは、悪魔なのか？未曾有の窮地に仲間と立ち向かう草薙だが。
　幻惑の世界に引きずり込まれる、想師シリーズ第二弾！敵か味方かナゾの外国人想師ゼノファスト、絶大な力を持つ悪魔ヌーネと今回も魅力いっぱい。
　残念なのは、敵がストレートで迫力だった前作に比べ、今回はやや観念的にすぎること、そして私にはなじみの無いＲＰＧの概念が持ち込まれているところか。
　旋視・転視が艶やかにショッキングだった前作の方が好みだが、それらの点をさしひいても本作は充分に面白い！！世の中に、これほど面白い世界を構築出来る作家がいるとは嬉しいサプライズだ。
　ハードボイルドしていながらユーモア精神あふれた草薙の台詞まわしや、尻にしかれ始めたエイくん、改心したシッキーの活躍ぶりなどたまらない魅力に満ちあふれています。こういう本に巡り会えると、ああ読書してて良かった、と思う。シリーズ続編を熱望！！
ｐ．ｓ．官能描写が無いのも硬派で好み。サガノヘルマー「ＢＬＡＣＫ　ＢＲＡＩＮ」好きな人に超オススメ。