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読書の記録

三崎亜記「鼓笛隊の襲来」

鼓笛隊の襲来鼓笛隊の襲来
三崎亜記

光文社 2008-03-20
asin:4334926010

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 ちょっと不思議なありえぬシチュエーションをリアルな手触りで書く短編集。
 表題作は、台○を鼓笛隊に置き換えたシュールなお話。雨降って地固まる的ヒロイン家族の関係がよい。
「彼女の痕跡展」朝起きたら、喪失感に襲われる不思議。ラストの解釈が好みではない(言葉まで交わしていながら、受付まで含めるのは出来すぎだ)が、説明されぬ謎が謎を呼び、興味と不安を煽る作品だ。
「覆面社員」いきなり覆面をかぶったら…。ああ、途中までは面白いと思うのに、どうしてこのラストなのだろう。語りすぎな気がしてならない。
「象さんすべり台のある街」すべり台がもしも本物だったら。うーん、ラスト一行が余計だと思うのだが、それは好き嫌いだろうか。どうも私は著者と波長が合わないらしく、知りたいところが書かれずそれを言ったらいかにもで陳腐、ってところが詳述されるなど、カクカソウヨウの感があるのだった。
「突起型選択装置」これは改題前の方がそのものズバリで良かったのでは。不条理極まる味わい。主人公の選択は私の好みではない。寓話として読むべき?
「「欠陥」住宅」奇想・幻想味の強い作品。
「遠距離・恋愛」可愛い恋愛もの。本書の中では一番これが好きかな。しかし、有川浩作品のようにベタ甘ではなく影はある。
「校庭」ありがちなホラーだが、途中までのムードは良かった。
「同じ夜空を見上げて」恋愛もの。事象はシンプルだが、悲しみと希望が混ざりあった複雑な味わい。シチュエーションの説明や理由はないので雰囲気を味わうべきか。
p.s.設定や雰囲気は嫌いじゃないんだが、根本的なものの考え方が自分は著者とは合わないような気がする。残念。