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読書の記録

岸田るり子「過去からの手紙」

過去からの手紙 (ミステリーYA!)過去からの手紙
岸田 るり子

理論社 2008-02
asin:4652086180

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 高校生の純二が合宿から帰ると、腐肉の臭いに出迎えられ、家には置き手紙があり、母はいなかった。純二は謎を幼なじみの静海と共に調べ始めるが。

 理論社ミステリーYA!の一冊。先駆けである講談社ミステリーランドは出版が滞っているのに、理論社は威勢がいいなあ。
 本書は謎は魅力的だし料理部に入っている主人公の作る飯は旨そうだし、リーダビリティは最高なんだけれども、幾つかの理由で好きになれなかった。
 まず、幽霊の存在が唐突に感じられること。幽霊なる異次元の存在とはいえ万能ではないとか、微妙に生きた人間と折り合わない不気味さはよく出来ているが、作中で幽霊登場シーンは少々浮いているように思える。
 そして気になるのは、主人公たちの精神年齢が幼く見えること。あくまで私が読んだ印象だが、このくらいだと小学生か中学初年度あたりを想像する。もちろん純真な高校生像が悪いわけではないが違和感を覚えた。
 最大の違和感は、主人公たちの食い意地だろうか。涼しい季節と断ってはいるが、一度ゴミとして捨てられた肉(しかも屋外で2日も経過している)を拾って冷蔵庫に保存し、食べてみるかどうか検討するなど、私には信じがたい。この子たちは料理部だから、食材の鮮度が大切なことを知らないはずはないと思うのだが。それとも、“腐りかけの肉は旨い”ということか?本書では見送られるが、デビュー作「密室の鎮魂歌」密室の鎮魂歌(レクイエム)でも殺人現場(起きてまもない)で平然と登場人物が食事をしていたっけなあ。
 心配性な自分は、岸田ヒロインの豪快さについていけないようだ。

p.s.カバー折り返しのところのあらすじに「純一」ってあるんだけどそれはおにーちゃんのことで、主人公は純二。しょっぱなに盛大なミスプリ。