土屋隆夫「人形が死んだ夜」
人形が死んだ夜 土屋 隆夫 光文社 2007-11-27 asin:4334925839 Amazonで詳しく見る |
愛する家族を失った女の仇討ちは成功するか?長編ミステリー。
いや、ふだん12歳が書いたミステリーですとか、15歳が文学賞受賞ですなんて言われてもフーンあっそう、としか思わない私だけれど、本書にはぶったまげたね。
90歳のミステリー!しかも、腰椎骨折入院のさなか構想されたもの、と聞いては平身低頭する他はない。うーむ、リスペクト。ベテラン作家とはかくあるべし。
刺激的な書物では、ない。しかしトリック最優先で人間が単なる駒のようなミステリーを読みあさってきた自分みたいな読者には、本書のようなレトロなミステリーはかえって目新しく感じられる。
犯人は最初から提示されているに等しいが、犯人探しよりこまやかな人情を味わうミステリーと言えるだろうか。ほのぼのじゃなくて悲劇を描いているのだけれど、どこかキャラクターが時代劇の登場人物のように人懐こくて、なんだか読んでいて、ほっこりするのよね。
P181みたいな描写って、最近、の作家はやらないしね。これが最後とおっしゃらず、画家・奥村土牛「百歳の富士」のごとく百歳ミステリーを、ぜひ!!