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読書の記録

真梨幸子「深く深く、砂に埋めて」

深く深く、砂に埋めて深く深く、砂に埋めて
真梨 幸子

講談社 2007-10-16
asin:4062141191

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 魔性の女・有利子はその美貌で次々に男を惑わしていく。

 法廷サスペンス…というほどでもないし、なんと言ったらいいのだろう本作は。ミステリーらしい仕掛けは確かにある、しかし舞台が日本でもフランスでも、なぜかドラマの脚本みたいに味気なさを感じてしまう。彼女の魅力にしても、詐欺師の手練手管にしても、ただ文章でそういうものだと説明されるのみで、読み手に迫ってこない。小説とは確かに文章で説明するものであるけれど、本作からはあまり情景が浮かんでこず、文章が説明的に過ぎる印象。

 そして、有利子。貞操観念の薄い魔性の美女でユリコといったら、どうしても桐野夏生の傑作「グロテスク」を想起させる。あちらのユリコの迫力に比べると、似たヒロインをいだく本書が薄味に思える。
 本書のユリコに読者をも魅了するような魔が垣間見られればよかったのだが…。

p.s.オビの「天衣無縫」は「天真爛漫」の間違いじゃないかい。