海堂尊「ブラックペアン1988」
ブラックペアン1988 海堂 尊 講談社 2007-09-21 asin:4062142546 Amazonで詳しく見る |
佐伯教授が君臨する外科に入局したての研修医・世良は、個性的な先輩医や看護師たちから医療を学ぶ。
初々しい研修医が見たクセのある外科医の面々…というとちょっと人気漫画「医龍」っぽくもあるが、まあ面白い本であった。
「チーム・バチスタの栄光」では病院長となっているあの人の若き日の姿だとか、猫田さんが相変わらずだったりとか、田口センセがへなちょこだったりなど、シリーズを通して読むことでいろいろな感慨と発見がある作品だ。「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」を先に呼んでおいたほうが良いだろう。
内容は若き新米医師の成長物語として楽しめる。キャラが立っているところや病院、医局の雰囲気などさすがの臨場感である。
ただ惜しむらくはミステリーとしての核が弱い。人によっては納得出来る内容かもしれないけれど、因縁に至るまでがあまりにウカツすぎるのではないか。悲劇の原因は佐伯医師の言語能力不足かもしれない。みなが理由に思い当たらないというのも、放置されていたというのも両方無理がないかい?
無理に陰謀を絡めミステリー仕立てにするよりか、世良医師青春物語にしていただきたかったと、個人的には思う。
p.s.2004年に研修医の制度が変わり、卒後希望した医局に即入局ではなく、複数科をローテイトすることになった。そんなこともあって舞台が過去に設定されたのであろうか。