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読書の記録

マイクル・クライトン「NEXT」上・下

NEXT 上  (ハヤカワ・ノヴェルズ) (ハヤカワ・ノヴェルズ)NEXT 上 (ハヤカワ・ノヴェルズ) (ハヤカワ・ノヴェルズ)
マイクル・クライトン 酒井 昭伸

早川書房 2007-09-07
asin:4152088524

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NEXT 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ) (ハヤカワ・ノヴェルズ)NEXT 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ) (ハヤカワ・ノヴェルズ)
マイクル・クライトン 酒井 昭伸

早川書房 2007-09-07
asin:4152088532

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 遺伝子の特許や所有権は今どうなっているのか、現代的問題をエンタメに仕上げた社会派サスペンス。

 いや、恥ずかしながら新聞はとっていないしニュースも毎日は見ない私は、遺伝子特許なるものが存在し、その占有が社会問題化しているなんてことは、本書を読むまで知らなかった。
 本書は資本主義社会における遺伝子や分子生物学的諸問題を物語の形で提示している。そして過熱する訴訟社会問題も。恐ろしいのは本書に書かれたエピソードの、けして少なくない幾つかが事実であることかもしれない。個々のエピソードはリアルながら、ストーリー的にさほど抑揚がない。それなのに飽きずに読めるのは、題材の良さと綿密な取材の賜物だろう。
 本書でとくに魅力的なのは、自然から見れば鬼子であるジェラールとデイヴだ。彼らは倫理的な問題を抜きにすれば、我々にとって理想の友人であり、家族となりうるのだ。しかし我々には福音でも当の彼らにとってこの状況は果たして幸福なのか、読後考えてしまった。心を失った科学が行き着く先は悪夢なのだ。

p.s.死体の売買に関するノンフィクションには「死体闇取引」死体闇取引―暗躍するボディーブローカーたち、ミステリー味を強めたフィクションに北川歩実の作品がある。「長く冷たい眠り」には冒頭の短編にインコのエピソードが、「猿の証言」猿の証言 (新潮文庫)ではチンパンジーが扱われている。しかしチンパースンとヒューマンジーって、どっちが主流なんだろ。