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読書の記録

西尾維新「不気味で素朴な囲われた世界」

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス ニJ- 20)不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス ニJ- 20)
西尾 維新

講談社 2007-10
asin:4061825577

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 学校内の三奇人の一人を姉に持つ串中弔士。彼は友人の病院坂迷路とともに学内で起きた殺人を推理するが。

 正直、TAGRO先生のイラスト見たさに買ったような小説だったが、存外に楽しめた。
 続編というわけではないのでいきなり本書から読んでも問題はないが、「きみとぼくの壊れた世界きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)から一人本書に登場するので、既読だと話が早い(いや、でも登場するのがアノ人で良かった。同じ“壊れた”人間とはいえ、妹のモモを吸うような壊れ方をした変態は私はゴメンだ)。
 ミステリーとしてはさほど新しい着想とはいえないのだけど、今風のキャラクターにきれいにはまる真相で、美しさすら感じるラストだった。探偵役、真打ちの彼女のカッコよいこと。あの台詞、痺れるぜ。
 たぐちゃんファンとしてはもっともっと挿画を見たいし、著者あとがきによれば黒猫、迷路以外にも病院坂一族は全国にいるそうなので、ぜひぜひシリーズ化してほしく思うのだった。

 維新小説は人間の持つ執着が希薄で、どうにも頭でっかちな印象があるが、本書はそんな特徴を逆手にとった好著。こういうキャラでもなければ成立しない犯罪であり、世界なのだった。

p.s.ややネタバレ
コレに近いテイストの作品。語り手がもっと物語に関与すると「不気味で〜」になる、みたいな。