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読書の記録

北村薫「1950年のバックトス」

1950年のバックトス1950年のバックトス
北村 薫

新潮社 2007-08
asin:4104066060

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 不思議だったり怪奇だったり、日常のふとした情景や、駄洒落とか駄洒落とか駄洒落を扱った掌編集。

 最初読み出したらすごく私好みな話ばかりで、甘やかなムードが突如凍りつく「百物語」、不可思議で読後感のよい「万華鏡」、うすら寒くなる「雁の便り」、もしも実話怪談と言われたら信じてしまいそうな「包丁」は怪奇幻想小説としてたいへん面白かった。
 ただこの後しばらく純ブンガク的な…ムードはあるがオチのない小説…が続き、エンタメ度は低くなる。
 だが、ほのぼのと親子の情を綴る作品は心地よさを感じた。
 その中で瑞々しい青春を描いた「百合子姫・怪奇毒吐き女」は可愛らしく、表題作は蘇る思い出が清烈。バラエティに富んだ短編集であった。私的には最初のホラー調の話をもっと読みたかったな。