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読書の記録

恩田陸「木洩れ日に泳ぐ魚」

木洩れ日に泳ぐ魚木洩れ日に泳ぐ魚
恩田 陸

中央公論新社 2007-07
asin:4120038513

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 今夜で別れんとしている男女が、あけわたし間近な部屋で一晩生と死を語り明かす。

 男女の会話が生き生きとして巧みだ。ありふれた(ミステリーでは使い古された)出来事や陳腐な真相も、この著者の手によるときらめいて見えるから不思議。文章の魔法である。たとえるとその様は、抽象画だと思っていたら徐々にピントが合ってきて意外な絵が浮かんでくるのにも似て、比類なき楽しみを与えてくれるのであった。
いつも(?)と違ってきちんと話が閉じて完結するから、オープンエンドだとモヤモヤするんだよねえ、って人にも安心。そのぶん(広げた風呂敷をきれいにたたむためか?)途中の謎めき度、わくわくとさせてくれる盛り上がりは、いつもの作品よりも低め。

p.s.主人公もヒロインも、あまり好きになれない人間として描写されているのはわざとなのかしら。