篠田節子「純愛小説」
純愛小説 篠田 節子 角川書店 2007-06 asin:4048737791 Amazonで詳しく見る |
熟年者の恋を描く短編集。
いやあ、恐ろしいのは人間だ。本書を読み終えた時、タイトルにこめられた皮肉に気づかされることだろう。いわゆる「純愛」を売り文句にした小説で泣けない私だが、本書には身につまされた(泣きはしなかったけど)。
純愛って結局は当事者の彼氏彼女二人だけの盛り上がりであって、違う側面から見たら不恰好だったり愚かしかったりもする。それでもどうしようもない何かの激情に突き動かされて、現実にはありえぬ理想の純愛を求めてしまうのが、人間なのだ。地味ながらじわじわと効いてくる短編集であった。
p.s.セカチューブームを苦々しく思っているような人におすすめ。