読書日記PNU屋

読書の記録

追悼・河合隼雄先生

 私が河合先生の著作を初めて読んだのは、浪人生の時だった。頭でっかちで背伸びしたい年頃に出会ったのは「影の現象学影の現象学だった。こんなに論理的で知的な本を書かれるなんて!と、すぐにファンになった。
 月日は流れ、私は医学部を出たはいいが親ともめて家出夜逃げ駆け落ちし、新天地を目指した。そんなときも「こころの処方箋」こころの処方箋や「働きざかりの心理学」働きざかりの心理学 (新潮文庫)などを支えにしていた。
 日々のせわしない生活で忘れてしまいがちな大切な言葉が、摩擦少なく楽に幸福に暮らす知恵が、そこにはそっと書きとめられていたのだった。

 河合先生は亡くなったけれど、先生の遺された言葉はこれからも読者の心を内から照らしつづけるだろう。さようならは、言わない。