鯨統一郎「浦島太郎の真相」
浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 鯨 統一郎 光文社 2007-05-19 asin:4334076548 Amazonで詳しく見る |
バーで繰り広げられる、おっさん三人のヤクドシトリオと妙齢の美女との推理談義。「九つの殺人メルヘン」に続くバーミステリー八編を収録。
しまった、前作を読んでいなかった…と思ったが、いつも通りのこの著者らしい脱力感ある作風だった。
世代の問題や、私に知識がないことから昔の映画・アニメ・ドラマ・歌・スポーツ・お笑いのうんちくはわからぬことだらけであった。わかる人にはグッとくる部分なのだろう。
グルメを楽しみながら思い出話たけなわとなったところで、そういえばと事件の話題が持ち出され、昔話解釈と絡めながら推理されていく。昔話に関しては「本当は怖かった日本昔話」みたいなたぐいの本を既読であれば、だいたい展開の予想がついてしまう。それでも主人公が調子にのったオヤジどもにくれるドライなツッコミは楽しいし、著者の既刊がさりげなく話題の中に紛れていたりするのは面白かった。
だが、本書で私が一番気に入ったのはカバー画および挿画だ。ニュアンスあり、どこかダリの如きシュールレアリズム思わせる絵で、たいへんに好みであった。