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読書の記録

絲山秋子「ダーティ・ワーク」

ダーティ・ワークダーティ・ワーク
絲山 秋子

集英社 2007-04
asin:4087748537

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 忘れられぬあの人、もどかしい恋、男女の友情…ポップでいて、しんみりせつない連作集。

 今までのこの著者の小説は、文章の巧さには酔わされるものの、主役たちがどうにも好きになれなかったのだった。しかし本作でようやく、幸せになってねと真摯に祈りたいような気持ちになった。こういうのは好きだ。軽妙ながら読者のツボがわかっている、小技の効いたお話ばかりである。
もちろん中には到底好きにはなれないような人物も出てくるのだけど、それもひっくるめて魅力であろう。
 興をそぐといけないため詳しくは書かないが、あの人物がこちらでは主役となり…また別の物語で言及され…その構成の妙にヤラレた。いやぁ、世の中案外狭いものなのね。
 他者から見た人物像が、本人の語りではガラリと変わっていたり、そんなプチ真理も例示されているのだから、読まないテはない。クルマ(珍車)好きや音楽好きなら二倍おいしい物語である。

p.s.個人的にはクマーとTTがお気に入り。これまたベーシックな趣味だが。
p.s.その2 著者が喫煙者ということもあってか、登場人物がやたらタバコを吸うのでちょっと食傷気味。私はアンチ煙草だからな…。