追悼・藤原伊織氏
作家・藤原伊織氏が食道がんのため亡くなった。デビュー作がその面白さから江戸川乱歩賞・直木賞を同時受賞したことは衝撃であった。ハードボイルド小説、企業サスペンスの旗手として大いに期待していたのだが、もう新作が読めないなんてやるせなく、さびしく、せつない。
先日、筑紫哲也ニュースで筑紫キャスターがタバコから肺がんになったことを報道していた。そこに出演した鳥越俊太郎氏が「たばこをやめてと声を大にして言いたい」と発言しており、私も同感であった。喫煙者のみなさんにも言い分はあろうが、喫煙により発ガン率が上昇するのは事実である。小説家のみなさんには今からでも禁煙していただいて、末永く作品を読ませていただきたく…身勝手な一読者はそう思う。
私が既読の作品と感想。
「テロリストのパラソル」★★★★
哀愁ただようアウトローなヒーロー。青春の残骸が彼を苦しめる。クサイかもしれぬが、それもまたよし。
「ひまわりの祝祭」★★
前作「テロリストのパラソル」があまりに凄絶に美しかったので、それと比べると展開が唐突で全体として散漫な印象がぬぐえなかった。ヒーローの超能力、何の役に立ってるの?
「てのひらの闇」★★★
宣伝課部長の堀江は、過去に恩義のある会長から、とあるビデオテープをCMに使えないかと打診される。会長自身が撮ったというそのビデオテープには不審な点があった。その後会長は死を選ぶ。会長はなぜ、死なねばならなかったのか…堀江は夜の街を駆ける。
これは1999年に発表されたハードボイルド作品。2005年に出た「シリウスの道」を読んでいたため(シリーズというわけではないが)、本作も広告業界ものなのかな…という予想は裏切られた。広告業界もちらりと出ては来るが、基本は××道ものなのである。これは主人公・堀江のリアリティを失うほどの特殊設定が受け入れられない人間にはきつかろう…私もちょっとのけぞりそうになった。
しかし、発熱しながらふらふら探偵活動をして職場の女性(ちょっぴり堀江に気がありそう)に気遣われるって!これはおじさんファンタシィなのかもしれないな。
ありえない…と思いつつ読み終えれば、さすがのカタルシスある読後感でたまにはこういう古風なヤクザ・ボイルドもよいなぁと思ったりもしたのだった。
p.s.逢坂剛による「解説 イオリンの恐ろしさ」には愛を感じた!
「シリウスの道」★★★★
感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/pnu/20050614
「ダナエ」★★
感想はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/pnu/20070210