五條瑛「J」
J 五條 瑛 徳間書店 2007-03 asin:4198623007 Amazonで詳しく見る |
渋谷をフラフラしていた浪人生の秋生は、美しい女性を助ける。多発するテロ事件と、美女は何らかの関係があるようで…。
秋生の成長物語としてはよく出来ているのだが、エンタメとしては不満が残る。まずヒロインであるジェイに魅力も個性もない。彼女がいかに魅力的であるかは秋生の目から描写されてはいるが、読者をも同様に魅了するまでには至らないという印象(少なくとも私は)。
これは小説だから仕方ないところもあるのだけど、ジェイの話し言葉がいかにもな女言葉ばかりなのも好みではなかった。秋生くんの見つけた生き甲斐は確かに素晴らしいものではあるが、ここで久野が出てくる意味が読めてしまうと興ざめだ。
そして最終決戦のはずの終盤が、さほど盛り上がらず予定調和内にオチるのも寂しい。どことなく物足りない展開であったが、金満日本で暇を持て余す若者が、本書から何か真剣にやってみるということを魅力に感じてくれればよいのかもしれない。
p.s.なんか女性で「J」って以前にもあったな〜と思ったら、この作品だった。津原泰水「アクアポリスQ」私的にはこっちの「J」の方が好きだな。