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読書の記録

永井するみ「年に一度、の二人」

年に一度、の二人年に一度、の二人
永井 するみ

講談社 2007-03-07
asin:4062138700

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 年に一度しか逢えない男女を描く「シャドウ」「コンスタレーション」「グリーンダイヤモンド」の三編を収録。
 主に2つのカップルを中心に話は進むのだが、読んでいくうちに疑問で頭が占められていく。なぜ、年に一度!?なぜ、競馬場?!なぜ、香港?!そのどれもが曖昧なままに進んでいくので、設定に無理を感じてしまう。
 そしてとてもありふれた展開である。もう全ての物語パターンは出尽くしているらしいので、仕方ないのかもしれないが新味が全くないのはまずかろう。無理に香港を舞台にしなくても良かったんじゃないか。香港の風景やら競馬場やらの描写に枚数を割いたせいか、 肝心の恋人たちの描写がなおざりになってしまった気がしないでもない。
 繰り返しになるけど、[年に一度][香港][競馬場]の意味があまり効いてないのね。作者の狙いはどこにあったのか、ちょっときいてみたい。
 そしてここに描かれた恋の形は、どれもずるいものだ。なあなあでキープくんをつかまえながら、アバンチュールも楽しむ…そんな恋なんて、打算的で美しくない。ヒロインたちもただ優柔不断なだけの女にしか見えないし、魅力がない。すいすい読めるがあとに何も残らない小説だった。もし自分だったら…と考えさせるのが狙いだったんだろうか?