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読書の記録

倉阪鬼一郎「うしろ」

うしろうしろ
倉阪 鬼一郎

角川書店 2007-03
asin:4043843011

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花陰の街にある女性専用マンションは呪われた場所だった。留学生のイェニョンは背後に不吉な存在を感じ取るが…。
魘の字、文字禍、首のない鳥、地口とアナグラムの言葉遊び…と、いつもの著者らしい趣向がふんだんに盛り込まれているが、展開の方はというとベタにB級ホラー一直線で残念であった。
繰り返されるモチーフにしても、最初こそはインパクトがあれど、あとはリピートオンリーなので恐怖がわかない。クラシックな怪談に言及したり、夢の世界でしつこいまでに言葉にこだわる姿勢がさすがにこの著者らしいが、それ以外は通り一遍のよくあるホラーとしか思えなかった。残忍かつ残酷であるが、徹底した地口が180°回転してユーモラスに思えてしまうせいか、恐怖感を煽ることに失敗したように思う。これならば、ミステリージャンルの三津田信三「魘魅の如く憑くもの」厭魅の如き憑くものの方が、背後にしのびよるモノの恐怖度では上であったと思う。あっそうか、あちらと違って本書ではプロローグで既に祟るモノの正体が知れているから、それ以上怖くなりようがないのだな。