山田詠美「無銭優雅」
無銭優雅 山田 詠美 幻冬舎 2007-01-31 asin:4344012844 Amazonで詳しく見る |
42歳の慈雨は、同い年の男とベタ甘なラブラブ生活をおくるが、のろけるのも楽じゃなくって…?イチャイチャ文学、登場。
本書がお気に入りの人は、以下の文章で不快になるおそれがあります。ご注意ください。
うーむ、途中で何度も挫折しかけた本であった。著者のエッセイ「熱血ポンちゃん」そのままのハイテンション文体で、しかも実年齢の割に精神年齢がティーンのごとく瑞々しい(それなりに酸いも甘いもかみわけてらっしゃるとは思うのですがあまりにテンションがね)慈雨ちゃんのモノローグなもんだから、読むのがつらいのなんの。
私は前作(恋愛短編集)の「風味絶佳」が受け付けられず、とくに一部の短編の渡辺淳一「エ・アロール」的趣向にうんざりしたものだが、本書もその流れをくむ物語である。はたから見てみっともなくたって、いいじゃない。好き同士なら、いいじゃない。たっぷりイチャイチャしようぜい。そういう本、である。恋ってステキ、いつもいっしょ。後半明かされるある事実は、ふつうのカップルならば激震の走ることだと思うが、ヒロインのパーソナリティは特殊なのであまり一般民の参考には、ならないと思われる。
子が40過ぎても親をパパ、ママと呼ぶ家庭。奔放に生きる叔母をリスペクトする姪。あっけらかんとしたヒロイン。あれ、この構図どっかで見たぞ…と思ったら、まんま「熱血ポンちゃん」で語られる山田家の様子なのであった。すると慈雨は、エイミー姐さん本人にしか見えてこなくて、小説として本書を味わうことに私は失敗した。
本書が好きな人を、否定はしない。ステキなきらきらしたコトバがいっぱいあるし。だが、私にはついていけないのであった。