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読書の記録

有川浩「クジラの彼」

クジラの彼クジラの彼
有川 浩

角川書店 2007-02
asin:4048737430

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 自衛隊員たちの恋愛模様をポップに描いた絶品の恋愛小説連作集。表題作ほか、「ロールアウト」「国防レンアイ」「有能な彼女」「脱柵エレジー」「ファイターパイロットの君」に「あとがき」を収録。
 私はこの作家さん、本書が初読である。人気があるのは知っていたが、なんとなく読まないでいたことを後悔した。なんと楽しい本であることか。恋はキスするまでの期間が最も楽しいなどと巷ではよく言うが、自衛隊ならではの遠距離恋愛も、真面目一徹な人がふと見せる純情も、何年間も同じ人を愛する一途さも、みな感動的だし爽やかである。
 実際の恋愛にはどろどろとした部分も切り離せないものだが、本書のように恋の可愛いウキウキを詰め込んだ物語は素敵だ。とくに不倫嫌いな私には直球でツボだ。ベタ万歳!ビバ、ベタ!アンハッピーな物語は嫌い、って人にも強力にオススメである。
 キャラの立った者同士が交わす流れるようにおしゃれで可愛い会話も見所だ。
 あとがきはハイテンションで危うくひいてしまうところだったが、本書のリアリティが真面目な取材と作家の才能のブレンドから生まれたものであることが知れた。そして本書の幾つかの物語は、「海の底」と「空の中」のスピンアウトであるとか。記憶の新鮮なうちにぜひ読まねば、と思うのだった。

p.s.目次のデザインがたいへんきれいで素晴らしいので、ハードカバーでご覧になっていただきたい。

海の底
海の底

空の中
空の中