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読書の記録

矢田部孝司+あつ子「お父さんはやってない」

お父さんはやってないお父さんはやってない
矢田部 孝司+あつ子

太田出版 2006-12-05
asin:4778310462

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 何もしていないのに痴漢呼ばわりされ、いきなり拘留…無罪を勝ち取るために、家族の戦いが始まった。
 周防正行監督の痴漢冤罪裁判映画「それでもボクはやってない」(以下、それボクと略す)パンフレットに紹介されていたノンフィクション。
 カバーからしてすごい。表や裏に、当事者の息子さんによる裁判官への手紙が掲載されているのだ。たどたどしいひらがなで綴られた文章が胸を打たずにはおかないだろう。
 内容は妻のパートと夫のパートが交互に時系列に沿って進む。ものすごい臨場感である。驚いたのは、映画「それボク」でいかにも創作だろうと思っていたエピソードのほとんどが事実であったこと。再審前までの経緯は、未婚既婚や母→妻などの役柄変更以外「それボク」とほとんど同じなのだ。こんな恐るべき冤罪事件が少なからず発生しているとは、日本はなんと恐ろしい国なのか。
 事件を知り、こうした冤罪が起きぬためにどうしたらよいのか考えてみた。
 痴漢と誤認されるのは満員電車がいけないので、フレックス通勤・通学をもっと普及させる。混雑時間帯は運賃を上げるなどすれば分散するだろうが、それは実現が難しいか。現実にすでに行われている女性専用車両をラッシュ時にも採用したらどうだろうか。
 そして、初動捜査の不備も改める必要がある。目撃者探しや先入観を持たぬ詳細な事情聴取の徹底はもちろんのこと、鑑識等の科学捜査も導入すべきだろう。「彼女は嘘をついている」でも思ったことだが、裁判が裁判官ひとりの印象と先入観と想像で結審してしまうのであれば、遠からず導入が予定されている陪審制度は望ましい側面を持つかもしれないと思った。