読書日記PNU屋

読書の記録

香納諒一「ガリレオの小部屋」

ガリレオの小部屋ガリレオの小部屋
香納 諒一

実業之日本社 2007-01-16
asin:4408535036

Amazonで詳しく見る

 さまざまな人間模様を描く短編集。

無人の市」男女合作している新人作家。だが表に出て来るのは男性のみ。編集者は漠然とした疑いを持つが。文壇裏事情もちょっぴり交えていて面白い。現実にそのような創作が出来るのかは疑問だけれど。
「流星」彼女が死んだ。男は彼女が最も愛した彼を探すが。青春時代にピリオドを打つための彷徨。ラストがやや拍子抜けしないでもないが、しっとりと落ち着いたムードだ。
「指先からめて」本が好きなだけだったのに、エロ雑誌の編集者になった女性だが。途中かなり恐ろしいんだけど、小さな編集室の雰囲気は伝わってきた。アッちゃんのキャラのせいなのか、どこか不安を孕んだ小説でもある。
「冬の雨にまぎれて」集合住宅人間模様。私事だが昔似たような目に遭い隣人に壁を殴られまくったことがある。きつい思い出。ライトにいかれていて楽しいが、オチがやや弱いか。
「雪の降る町」久しぶりに故郷に帰った女性ライターが体験する奇跡。いい話なのだが、中盤で展開が読めてしまうぶん、ちと印象が弱いかも。
ガリレオの小部屋」慶應男の思い出。なぜ慶應にこだわるのかしらと思ったら早慶OB用に書かれたらしい。私小説系純文学ふうの小品で、やや退屈した。
「海鳴りの秋」父と子はキャンプをするはずが…。感動的なお話。父・息子関係に思うところある人は、胸揺さ振られるのじゃないかな。それにしても、ゴローは大型犬にしては驚異的に長生きだな。

p.s.ミョウガってほんとに効くの?>「指先からめて」