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読書の記録

海堂尊「螺鈿迷宮」

螺鈿迷宮螺鈿迷宮
海堂 尊

角川書店 2006-11-30
asin:4048737392

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 落ちこぼれ医学生の天馬は幼なじみのジャーナリストから地元病院にボランティアてして潜入するよう頼まれる。そこ、桜宮病院では人が死にすぎるというのだが…。

チーム・バチスタの栄光チーム・バチスタの栄光ナイチンゲールの沈黙ナイチンゲールの沈黙に続く白鳥(?)シリーズ三冊目である。キャラの魅力光ったデビュー作、パワーダウンでがっくりの2作目と来て、今度はいかなる作品なのか期待半分、不安半分で読み始めた。
 読み終えて思うのは、楽しさ半分、もやもや半分ということ。巌雄院長を始めとして味わい深いキャラが続々登場するが、真相は最初から薄々見えてしまう。展開が予見出来るのは、ミステリーとしてはそれだけ丁寧かつフェアに伏線を張り巡らしている証でもあるが、物語としてはマイナスであるし、作中の偶然の使われ方には不満が残る。
 物語は前2作の世界背景を引き継いでいるし、登場人物もかぶっているので順に読む方がよいだろう。「ナイチンゲール」は投げ出したくなるかもしれないが。
 私としては、フレッシュな主人公を起用したこともあり2作目よりは楽しめたが、細部に不満が残る。ラノベっぽいアクの強いキャラをシリアスな話に投入しているので、どうも芝居めいた仰々しさが漂うのだ。コードネームなんて恥ずかしいし。
 他にも、切れ者ということになっている白鳥がいながら、あっさり思い込んで残る可能性を検討すらしないところ。どうも変だと思っていたらラストで種明かしサービスがあるのだが、私ですら気になる可能性を誰も考慮しないのはおかしいと思うね。
 不満はこのくらいにして、良いところも。現代医療の問題点をえぐる小説であるところ。久坂部羊「破裂」破裂とモチーフは違えどテーマは近いかもしれない。
そして本作、今までほのめかされながら登場しなかった氷姫が初お目見えする。だが…萌えねーなぁぁぁ。それも好きずきだろうか。こんな人だったとは、がっかりである。
p.s.続編につながる終わりだけれど、氷姫にもあの花ドクターにも魅力を感じない私はどうすればよいのだろう。