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読書の記録

海堂尊「ナイチンゲールの沈黙」

ナイチンゲールの沈黙
海堂 尊著
宝島社 (2006.10)
ISBN:4796654755
価格 : \1,680

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田口外来に今日も持ち込まれる無理難題。今度は小児科患者の親が殺されて?
チーム・バチスタの栄光チーム・バチスタの栄光に続く病院シリーズ第二弾。


著者デビュー作である「チーム・バチスタの栄光」を私はベタ誉めした。そのときの文章はコチラ↓
http://d.hatena.ne.jp/pnu/20060316/1142514011
現役医師という多忙な職業ながらそのメリットを存分に生かして、大病院の人間関係を闊達に描写する筆力に感嘆したからである。
本作も前作と同じ病院が舞台となるのだが、殺人事件の捜査と推理・不思議な歌の秘密・デリケートな病に罹患した小児患者の運命が三つ巴にからまりあって進行するので、ゴチャゴチャとした印象は否めない。変人図鑑ともとれる多彩な人物が次々登場する趣向も混沌に拍車をかける。キャラクターの魅力で引っ張ってはいるが、もう少し整頓された話の方が私は好みだ。
この奇人変人が戯れ言を交わしあう感じ、どっかで味わったことがあると思ったら同じくキャラ立ちミステリーの西尾維新だ。登場人物のケレン味だとか仰々しい通り名などは実に似ている。主人公が傍観者かつボヤキ屋なところもカブるかな。
維新小説と本書の相違点は女のコ。本書はオジサン・オバサンの描写は格段に巧いものの、看護師や少女の造形がレトロなのが欠点だ。語尾にいちいち〜わよ、〜のよを付けてしゃべるティーンなんていないだろ。翻訳小説ならともかく。西尾維新をう〜んと古臭くしたら本書のようになるのかもしれない。

犯行の方法も、実際にそういう実習をこなしてきた自分には受け入れがたいものがある。臓器は体内にコロンときれいに置かれているのではなく、果てしなく膜やら脂肪やらに覆われているものだ。刃物などすぐに切れなくなるはず。医師でありそんなことを百も承知のはずの著者がわざわざこの設定を用いたということは、リアリティは気にせずフィクション小説としての意外性を追求した結果なのかもしれない。とかく展開のもたつきが気になるのであった。

p.s.小夜ちゃんに全然感情移入できないんですけど、そんな私ってまちがってます???