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読書の記録

伊藤潤二「潰談 新・闇の声」

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 ホラーの鬼才・伊藤潤二新刊である!
 まずは人気の双一シリーズからニ編。「双一前線」はオチに安堵。
 「双一の愛玩動物」は可愛いニャンコも双一の手にかかると…というお話。しかし現実の猫も、この作品ほどではなくとも色々穫ってきますわよね。猫、それは或る意味ホラーな生き物。双一シリーズは大好きなので続けていただきたいものだ。

「合鏡谷にて」
 著者お得意の奇妙なムラもの。不条理ながらどこか美しい幻想味あふれるラスト。

「幽霊になりたくない」
 妻を裏切ってしまった男が陥る恐怖。可愛いコには毒があるってことで。ヒロインの表情が実に凄絶だ。

「蔵書幻影」
 本を愛する夫の変貌を見つめる妻だが…。ひたすら不気味な作品。本がたくさん出て来て背景が大変だったろう、と余計なことを思った。

「闇の絶唱
 カバーイラストになっている作品。ウツるホラーの本領発揮といったところ。好きでもないメロディがしょっちゅう頭にこびりついて悩んでいる私にはヒヤリとする内容だった。

「潰談」
 表題作にして、本書における私の一番のお気に入りがコレ。著者の画力パワーが最も発揮された作品ではなかろうか。文章にしたらバカバカしいかもしれない状況が、ここまでシリアスになりうるのはやはり絵の迫力である。猟奇趣味大満足な逸品。
理由が明示されないところもまた、不可思議な余韻を残す。

 著者あとがきによれば緻密な絵柄のせいだろうか、右手を傷めておられるとか。心配である。まだまだ素敵に不気味な世界を紡いでいただきたい。