津原泰水「ブラバン」
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かつてブラバンのメンバーだった男女が二十五年後、
一度だけ再結成するため集まろうとするが。
高校吹奏楽部青春物語かと思いきや、甘さは控えめ。
とうに成人した目から振り返る高校当時は甘酸っぱく
せつないのに残酷でほろ苦い。
私はブラバン自体に興味ナッシングなのだがこの著者の作品なので
読まずにいられなかった。
巻末の主要曲解説を見ても知っている曲は2曲のみという音楽音痴
(聴いてみれば記憶にある曲があるかもしれないけど…)。
楽器も関心がなく名前を見ても頭の中に像が浮かばぬそんな私で
あっても、ブラバンのしんどくも楽しい練習や人間関係の
複雑さを仮想体験し、楽しむことが出来た。
音楽の持つ魔性も描かれていて惹きつけられた。
登場人物が多数出て来るが皆キャラが立っているのですいすい読める。
自ら楽器を演奏したことのある読者ならば、本作の時代性や
生々しい楽器への取り組みをもっともっと楽しめるに違いない。
かつての友と再会するうちある者は変わり果て、そこに取り戻す術のない、
容赦ない時の流れを感じる。
変わってしまったことへの驚き、それでも変わらないものへの情熱に
胸打たれる小説だ。