読書日記PNU屋

読書の記録

永井するみ「ダブル」

駆け出しライターの多恵は、葛西地区周辺の変死事件に興味を持ち、
ある主婦に疑いを抱くが…。


被害者も加害者も歪みまくっているサスペンス。
一応正義の側に位置するはずの多恵が思い込みの激しい
エキセントリックなタイプの女性なので、読者として感情移入が
しにくく悪を追いつめる爽快感はない(彼女は自分の立身出世、
スクープのために事件を追っている節もあるし)。


この人物造形は狙ったものだろうか。
とにかく、嫌な奴か異常な奴ばかりである。
ほんのチョイ役の主婦ですら、他人の不幸に胸ときめかせ
妄想ライターに他人の些細なことまで告げまくる性格異常者と
きたもんだ。


うーん、ネタはいいと思うのだよ!!
ヒロインを妄想質に仕立てたのも、正義側のヒロインを醜く
描くことで、人間それ自体に潜む心の醜さを抉り出そうと
したのかもしれないし。


でも、かなり前の方で、犯人わかっちゃうでしょう。
レッドへリングには物理的にムリでしょう、犯行が。
そこらへんが私には物足りなく思えた。
犯人の韜晦趣味も保身から考えると現実的にはありえないし
説明的にすぎると思うが、いかがなものか。