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読書の記録

人を誉めるなら 生きてるうちに

石田徹也遺作集
石田 徹也著
求竜堂 (2006.5)
ISBN:4763006290
価格 : \3,150

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絶賛品切れ中だった本が増刷されたらしく、ようやく届いた。
著者は静岡の人だったのか!
同郷じゃないか!ああびっくり。


さて内容だが、人と器物が溶け合うなどアリエナイ
シチュエーションの絵がいっぱいである。
シュールレアリズムのような。
そのリアルな質感と細密な描写ぶりはサルバドール・ダリ
明るい色づかいながらどこか胸騒ぎのする画面づくりは
ルネ・マグリットに近いものがあるように思う。


すべての絵にカバー画と同じ人物と思われる男性が登場する。
某アート番組で放送された特集によると自画像ではないのだそうだ。
このどこかさびしげな、諦念ただよう男性の表情が見るものの心に
何かを無言ながら訴えかけてくるような気がする。


そして、TVで紹介された数点の絵画は
 おとなしいモチーフばかり
であったことが、画集を見るとわかる。


むろんそういう画ばかりではないけれど、
一目見たら忘れられないような、血と官能の世界が広がっている。
トラウマ系の絵画だ。
どこかでこの絵を見てしまったら、折にふれ悪夢でうなされるような。
そしてそれは、悪夢ではあるけれどどこか静謐で甘美な感覚をもたらして
くれるのだ。



「ひとを誉めるなら 生きてるうちに」というのは私が好きな
HIGH−LOWSバームクーヘンバームクーヘン
の歌詞だが、この偉大なる死せる画家の遺作集を
見て、私も同じことを強く思った。