読書日記PNU屋

読書の記録

薬丸岳「闇の底」

出所した性犯罪者が殺されていく。
正義はどこにあるのか問いかけるサスペンス。


乱歩賞受賞作「天使のナイフ」
でもそうだったが扱いの難しいテーマにチャレンジしている、
気概に溢れる作家である。


二作目となる本書では、再犯率の高い性犯罪は
犯人の命を奪うことが抑止力となるかが描かれている。
テーマは立派だ、リーダビリティもある、究極の選択ののちに
物悲しいラスト…まだ二作目だということを考えたら、
賞賛されてしかるべきだろう。


しかし敢えて苦言を呈するならば、描写が単調で登場人物の苦悩が
ダイレクトに伝わってこないのが不満だ。
効果として省いたのかもしれないが、サンソンはともかく
主役級の人物の心中をもっと読ませて欲しかった。
刑事達も横山秀夫のごとく描けとは言わないが、
ぞろぞろ出てくる割にキャラが立っていない。


少し手を入れればもっとスリリングでエキサイティングになった
と思うと少々残念である。
オチも私にはやや不満なのだが、そこは読者の好みによるのだろう。