読書日記PNU屋

読書の記録

朱川湊人「赤々煉恋」

妖しく、美しい怪奇短編集。


前作「わくらば日記」があまりに清く正しくいい話すぎて
物足りなかったので、「都市伝説セピア」のように再びダーク節に
なった本書を私は歓迎したい。


「死体写真師」
死せる妹の記念を残したい姉。
おぞましさでは本書収録作中ナンバーワンかも。
超常的真相より、あっち方面のアレが潔癖症な私には恐ろしい。
しかし姉、寂しすぎるなあ。相談出来る女友達はいなかったのか。


「レイニー・エレーン」
出会い系で出会った男女。雨の街に現れる女とは…。
実際にあったあの事件がモデルだが、青春物語の味付けにより
どこか儚げで生臭さを感じないのが良し悪しか。


「アタシの、いちばん、ほしいもの」
ある女子のかったるい日常、そのやるせなさ。
ネタは出だしでわかってしまうんだが、こんな暗くていいのかしらん。
或る意味地獄だわなあ。


「私はフランセス」
特殊なシンデレラ・ストーリー。
本題に入るまでがやや冗長で退屈だったが予想圏内で終わらぬ
オチが効いている。
後味の良くない小説の多い本書の中では爽やかな方では?


「いつか、静かの海に」
姫に出会った少年は…。
あれあれ一番知りたいことが書かれてなくて気になる〜!
なんだか拍子抜けのラストだが、姫の設定が魅力的だった。