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読書の記録

東野圭吾「赤い指」

赤い指
東野 圭吾著
講談社 (2006.7)
ISBN:4062135264
価格 : \1,575

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壊れた家族は犯罪を前にして初めて結束するか?
名刑事・加賀恭一郎もの長編。


「容疑者Xの献身」の直木賞受賞後、初長編とのことで
期待は高まる。
物語は加賀の親戚にあたる若き刑事・松宮の視点で語られる。
加賀主人公であれば彼が自分から喧伝することのないであろう
凄さを、松宮視点でモノを見ることにより強調してみせるのだ。


いたましい殺人の舞台は或る家庭だが、この家庭が冷えきって
いて恐ろしい。殺人にまで至るかどうかは置いといて、
このうちのような冷めた形式だけの夫婦にスポイルされた子と
いう家族モデルは日本ではごくありふれたモデルだから怖さ倍増である。
壊れた空虚な家で起きた犯罪を描くのと平行して、
加賀の親子関係も語られていく。
親子の距離について考えさせられてしまった。


息をのむ凄惨な犯罪あり、アッと驚くサプライズあり、
親子の意地と感動あり…なのだがどこか物足りない
(エンタメとしては充分なのだろうが)気がしてしまうのは、
フィクションにはつき物とはいえ、やや加賀に都合良く物事が
進みすぎるせいだろうか。
この犯人側の抜け作ぶりでは、いくら善良な松宮でも真相に
気付くのは時間の問題だったろう。
しかし高齢者はそれほどまでに我慢強いの?!ちょっと疑問。