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読書の記録

太田忠司「レストア オルゴール修復師・雪永鋼の事件簿」

レストア
太田 忠司著
光文社 (2006.3)
ISBN:4334076300
価格 : \840

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心の病に苦しむ修復師・雪永のもとに持ち込まれるオルゴールは、
わけありのもので…オルゴールを通して人の心を癒やす連作集。


雪永の飼う犬ステラが可愛い。
最初は依頼人が強引だし感情的だしで、自分なんかと卑下している
主人公・雪永の方がずっとまっとうに感じられた。
人が良く責任感の強い雪永が、自己主張激しく悪意こそないがかなり
図々しい女性たちの依頼に振り回される展開で前半はイライラしてしまった。


しかし、中盤から“ちょっとほろりのいい話”になり、
感動的なラストにつながっていく。
私はかたくなに心を閉じた状態の主人公には感情移入したものの、
ヒロイン睦月には共感出来なかった。彼女の行動も乱暴というか、
拙速に感じられてしまう。
だが、停滞した状況を打破するには彼女のごときハガネの意志力と
行動力が必要なのかもしれない。物語は終わらない。
雪永自身の物語はここから始まったばかりなのだろう。


p.s.周囲のエゴイスティックな人間に煩わされる雪永のストレスを
追体験して辛い中(かまってもらえるうちが花か)、格好いい上に
わきまえた望月の存在には大いに救われた。
脇役で終わるにはもったいないキャラだと思う。