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読書の記録

飛鳥井千砂「はるがいったら」

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頑張り屋の姉と、真面目だがのんびりした弟は、老犬ハルを介護する。


すばる新人賞受賞作。
たいへん読みやすく、脇役に至るまでキャラが立っていて楽しい。
特徴的な文体というわけではないが、デビュー作ですべらかに読める
文章だというのは強みだろう。


対照的な姉弟のパートが交互に進行してゆくのだが、
最初は二人に好感を持って読んでいたのに、読み進めるに従って
姉をどんどん嫌いになってしまって困った。
だって…瀬尾まいこ島本理生などこのごろの女性作家小説が多く
取り上げて来た、あのテーマ、不×にはまりこんでいるのだから。


価値観が違いすぎてどうにもついていけない。
訳知り顔の彼女が自分の無知に気付くまでの小説と言えなくもないが、
かやの外な弟も哀れなら、ゴタゴタの間放っておかれたハルも可哀想だ。
最初期待したよりは、ありふれた着地におちてしまったのが残念だった。


p.s.犬好きとしては、手にとらずにいられなかった本。
ただ不満なのは、表紙カバー画の犬。
私、ラブラドール・レトリバーかと思ったら、ハルは
「柴犬に似た日本犬の雑種」だそうな。
カバーに描かれた犬は、耳のよれ具合や萎えた足元など確かに老犬
らしくはあるが、日本犬系雑種には見えないと思うのだ。
細かいことだが、少々気になった。