道尾秀介 「骸の爪」
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小説家の道尾は、手違いでホテルの予約が取れなかったことから
瑞祥房なる仏所に泊まる羽目になる。そこには呪われた仏像があった…
「背の眼」2006.1(単行本は2005.1)に続くシリーズ第二弾。
オカルト風味は、超常現象全開だった前作よりも薄め。
その分、かっちりとした印象になっている。
(展開の都合上仕方なくはあるが)語り手が好意で泊めてもらって
おきながら、図々しくも相手の事情を興味本位で探りまくるところには
苦笑を禁じ得ない。ここは読み手の好みにもよるだろうが、善人ゆえの
鈍感さにしては行き過ぎじゃないかと私なんかは思う。
探偵役の真備は相変わらずの切れ者ぶり。
途中までの謎の盛り上げ方にはたいへん好感が持てるのだが、
謎解きのくだりになると(私個人の感想として、だが)急について
いけなくなるのは何故なんだろうか。
「背の眼」でもそうだったのだが、犯人の動機に腑に落ちない思いがする…。
ホラーよりだった前作よりも現実よりでミステリーとしては引き締まった
つくりであるが、「背の眼」や「向日葵の咲かない夏」2005.11
のようび、破綻がありながらも疾走する展開とサプライズを好んだ
向きには物足りないかもしれない。